冷え症

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冷え症

冷えの発症タイプ

冷え症は日常診療で良く見かる疾患です、男女比では女性圧倒的に多く、若い女性にもよく見かけます。現代医学では「冷え」は病気として認識されていませんのでほとんどの場合は治療の対象になっていません。現代医学でも疾患によっては劇的に効きますがほとんどの場合”それは困りましたね、少し様子を見ましょう”で終わりになります。冷え症のタイプとしては以下のようなものがあります

  1. 全身の冷え
  2. 四肢末端の冷え
  3. 下半身が冷え、上半身の火照り

1の全身の冷えの原因として多いのが基礎代謝の低下や甲状腺機能低下症
2の手足の冷えはの原因の多くは抹消の血行不全だと思われます
3ののぼせを伴う下半身の冷えでは典型的なのはエストロゲン欠乏症(更年期障害)です。
現代医学は基本的に冷えを疾患と捉えていませんので、対象とする疾患は意外と限られます。

全身の冷えと現代医学

基礎代謝・新陳代謝の低下が主な原因と思われます。最も一般的なのは甲状腺機能低下症になります、甲状腺ホルモンは細胞の代謝促進に不可欠な物質です、甲状腺機能低下症では典型例では寒さに弱くなり、体が浮腫みます。治療が必要な甲状腺機能異常症の頻度は女性では1.5〜4.5%スクリーンショット(2012-03-28 2.37.12).png甲状腺機能低下症の頻度に見られ、年齢が上がるに連れて発症頻度が高くなります。また症状の軽い潜在性甲状腺機能低下を含めると60歳以上の女性では20%にも達するとの報告もあります。
採血により甲状腺機能低下症が判明した場合TSHの値を見ながら甲状腺ホルモンのチラージンindex.jpgを内服することにより冷えを取ることが出来ます、TSHだけが高く甲状腺ホルモンFT3・FT4が正常範囲内に収まっている潜在性甲状腺機能低下に対しては統一した治療方針は未だにありませんが図に示すような案があります。

スクリーンショット(2012-03-28 2.38.20).png潜在性甲状腺機能低下症

  • 妊娠中・妊娠希望者はとTSHが10μg以上は積極的治療対象です
  • TSHが10μg以下でも基礎疾患や抗甲状腺抗体の有無で治療を校了します。

全身の冷えと漢方

漢方では冷え症については非常に多くの処方があります、全身性の冷え、代謝が低下した状態の冷えには一般的には附子乾姜を使います。乾姜は生姜を乾燥したもので新陳代謝を上げる作用があり体を温めます、日常生活でも生姜は体を温めるとてもポピュラーな食材です。附子は猛毒で有名なトリカブトを高温・高圧で処理して毒素を150分の1にした物でバーナーで燃やすように強く体を温める作用や鎮痛作用があります。この二大熱薬である乾姜と附子にが入った四逆湯茯苓四逆湯という方剤が全身の冷えによく使われますが、エキス剤がありませんので真武湯+人参湯または苓姜朮甘湯+附子を合わせてなんちゃって四逆湯・茯苓四逆湯として使用します。

真武湯.png__人参湯.jpg__

苓姜朮甘湯.png__ブシ末.jpg

  • 四逆湯≒真武湯+人参湯
  • 茯苓四物湯≒苓桂朮甘湯+ブシ末

四肢末端の冷えと現代医学

四肢末端の冷えは末梢循環障害が考えられます、循環障害の原因として以下の物が考えられます

  1. 動脈性の血行障害
  2. 静脈の血行障害
  3. 血液の粘度の上昇

動脈性の血行障害として閉塞性動脈硬化(ASO)閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)、膠原病等によく見られるレイノー症候群などがあります。
閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)は70歳以上の男性に圧倒的に多く、女性は1割程度である、また閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)は教科書的には有名ですが全国に患者が8000人程度しか存在せず、日常よく見かける女性の四肢末端の冷えやしもやけとは病態が異なると思われます。

毛細血管網と閉塞部位.png

静脈性として静脈血栓下肢静脈瘤による慢性静脈不全等が考えられます、凍瘡(しもやけ)は細い静脈の循環不全と考えれています。動脈性の拍動がしっかりしているにも関わらず四肢末梢の発赤、冷感等があれば静脈性の循環不全が考えられ、拍動が弱く、発赤冷感が強ければ細い動脈の循環不全、拍動が弱く皮膚が蒼白であればやや太い動脈の循環不全が考えられます、またABIと言う器械を使用すればより詳細に動脈性の循環不全を調べることが出来ます。図にそれぞれの疾患と(推定)循環不全の部位を示します

末梢血管を広げる薬剤にはプロスタグランジン(PGE1、PGE2)、カテコールアミン系(α遮断薬、β刺激薬)、ニコチン酸系、その他の循環系作用酵素薬があります

末梢血管拡張剤.png

プロスタグランジン系(PGE1・PGI2)の適応は以下の様な物があります

  • 閉塞性動脈硬化症
  • 閉塞性血栓性血管炎
  • 脊柱管狭窄症

動脈性の血量障害には適応がありますが静脈性の疾患に対しては適応がありません、またプロスタグランジン系の間でも違いがあり、PGI2の特徴は肺で不活化されず,PGE1(オパルモン・プレナール)よりも血小板,血管平滑筋のレセプターの親和性が強く、またPGE1が比較的太い動脈に作用するのに対し,PGI2は細い動脈に作用し、PGI2(ドルナー・プロサイリン)の方が血管に拡張作用が強い傾向があります。

PGI2(ドルナー・プロサイリン)の方が血小板や血管に対する作用が強く、また末梢の細い動脈に使用します。

プロスタグランジン系以外の薬剤(α遮断薬、β刺激薬、ニコチン酸系、循環系作用酵素)には動脈性の疾患以外に凍傷や凍瘡(しもやけ)にも適応があります、よく知られているユベラN(ニコチン酸系+ビタミンE)に関しては外用では凍瘡に関して適応がありますが内服剤に関しては適応がありません。

四肢末端の冷えと漢方薬

四肢末端の冷えには動脈性には当帰四逆加呉茱萸湯を静脈性には桂枝茯苓丸や当帰芍薬散などを使用致します、当帰四逆加呉茱萸湯四肢末端の手足の冷えや霜焼け、赤切れなどの治療にとても有名ですが薬の風味が苦手で飲めない方も少なくありません。手足が紫〜赤の場合は瘀血(血の流れが悪い)状態が考えています、舌や腹部の所見を元に駆瘀血剤を処方します、駆瘀血剤にはいろいろありますが代表的なものとして女性に良く処方される桂枝茯苓丸があります。

スクリーンショット(2012-03-28 2.51.50).png

当帰四逆加呉茱萸湯.jpg..........25桂枝茯苓丸.jpg

  • 瘀血があれば桂枝茯苓丸や桃核承気湯などの駆お血剤
  • 霜焼けがひどければ当帰四逆加呉茱萸湯
  • 水毒があれば当帰芍薬散や防已黄耆湯

のぼせを伴う冷え症(上熱下冷)

のぼせを伴う冷え症(上熱下冷)は気の異常が考えられます、気の流れを整える桂枝黄連の配合されている方剤を処方します。血の流れが悪い瘀血がある場合は桃核承気湯桂枝茯苓丸を皮膚や口唇が乾燥し手掌や足底が火照る場合は温経湯、イライラや自律神経失調症状が強うい場合は加味逍遥散などを処方します

スクリーンショット(2012-03-28 19.29.58).png
61桃核承気湯.jpeg106温経湯.jpg24加味逍遥散.jpg

  • 桂枝茯苓丸・桃核承気湯
  • 五積散
  • 温経湯
  • 加味逍遥散
  • 柴胡桂枝乾姜湯

その他の冷え症と漢方

特徴的な部位や症状に対応した方剤があります腰回りのひどい冷えには苓姜朮甘湯(+ブシ末)、高齢者の膝から下の冷えには八味地黄丸、腹部の冷えには人参湯や大建中湯、胸部や背部の冷えには当帰湯(+ブシ末)などが適応になります、種類が多くて大変です(;´ー`).......

スクリーンショット(2012-03-28 19.40.35).png
118苓姜朮甘湯.jpg7八味地黄丸.jpg100大建中湯.jpg

  • 腰の冷え;苓姜朮甘湯・五積散
  • 下肢・下腿の冷え:八味地黄丸
  • 腹部の冷え;人参湯・大建中湯
  • 胸部・背中の冷え;当帰湯

漢方薬の冷え症の薬は多種多様で薬の効き具合を確認しながら調節していきます、薬との相性が良ければ翌日にもポカポカ暖かくなり、体が軽くなります。

漢方薬を処方する際は患者さんの体質、陰陽虚実、腎虚や水滞の有無などが大切です。冷えと陰陽虚実の関係をまとめて見ました。

冷えマップ.png