福岡での保険診療での眼瞼下垂の治療をお考えの方
以下の内容は院長の林が執筆しています「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊
当院の眼瞼下垂術治療の強み
ショート動画(1〜2分)
眼瞼下垂の幅広い症状に対応します
- 皮膚の厚さ・脂肪の量
- 挙筋腱膜の状態
- 癒着の有無
- 眼の上の窪み具合・三重の有無
- 先天性・後天性?
保険診療で対応いたします
当院の手術は【健康保険】が適応される術式で行います。美容外科に勤めていた時期は【自費診療】で眼瞼下垂の手術を行っていましたが、手術の内容はほとんど変わりません。眼瞼の手術は眼科より【形成外科】での手術の方が、術後の仕上がりが安定していると思います。
審美性も配慮しています
保険診療での眼瞼下垂の治療は【視界不良の改善】が目的です、手術後に審美的な面が改善される場合がほとんどですが、二重の幅の指定や、目の形の指定は美容医療になります、自費での美容外科になります。
眼瞼下垂の症状
【眼の開き】が悪くなる病気です、慢性的な頭痛、ひどい肩こり、眼精疲労、その他に自律神経失調の原因になります、外見上は眠たい眼になり、以下の様な特徴があります。
右:60%の黒目(虹彩)が上瞼で隠れる 左:80%の黒目(虹彩)が上瞼で隠れる
【 外見的な特徴 】
- 黒眼(虹彩)の20%以上が瞼で隠れる(健常人は80%以上の虹彩が見えます)
- 瞳孔(黒目の中の黒目)が上瞼にかかって視界が悪い
- 眉を上げる癖がある
- 眼の上が凹んでいる
- 顎を上げる癖がある
頭痛・肩こり
次に目を開ける筋肉には眼瞼挙筋以外にミュラー筋があります、ミュラー筋は交感神経支配で、自分の意志ではコントロール出来ません。 自分の意志で上瞼を開けることできないので、脳は無意識の内にミュラー筋を使って眼をあげようとします、その結果交感神経が常に刺激された状態になります、交感神経は心拍数を上げ、血管を収縮させ、筋肉などの血流障害を招き、それが肩こり・頭痛・血圧上昇の原因となります。
- 慢性的に前額の筋肉(前頭筋)を使用しているため前頭筋の疲労。
- ミュラー筋の使用による交感神経興奮。
- 交感神経刺激による肩・首の血管収縮による血流障害。
眼瞼下垂の原因
まず【先天性】(生まれつき)と【後天性】の2つに大別されます。当クリニックでよく見るのは後天性の眼瞼下垂です。後天性の多くはハードコンタクトレンズの長期装用と加齢によるものです、瞳孔異常や眼球運動障害などがある場合は動眼神経や脳神経の筋ジストロフィー症などの大きな病気が隠れている場合があります。
- 腱膜性(一番多い)
- 先天性
- 上瞼・皮膚弛緩症
- 偽性眼瞼下垂症(一重瞼など)
- 神経性(動眼神経麻痺・ホルネル症候群など)
- 眼瞼痙攣性(顔面神経痙攣)
- 薬剤性(心療内科系の内服で)
眼の開くしくみ(*図あり)
瞼を開くには、①脳 ➡ ②動眼神経 ➡ ③眼瞼拳筋 ➡ ④挙筋腱膜とシグナルが伝達されます、挙筋腱膜は瞼にある軟骨(瞼板)に付着しており、瞼を上に引き上げます。 眼瞼下垂という病気は、この4つの組織のどれかが機能しない場合に発症します。
眼瞼挙筋の下にある筋肉は【ミュラー筋】と言い、交感神経が支配しており、自分の意志では制御できません。
先天性眼瞼下垂について
瞼を上げ下げする筋肉である、眼瞼挙筋が未発達のために発生します。おおよそ80%の患者様が片眼のみ症状が現れます。先天眼瞼下垂では眼瞼挙筋が【全く無い】のか【部分的に残っている】かによって治療方法が異なります。
上瞼・皮膚弛緩症(*図あり)
上瞼のたるみ
弛んだ上瞼の皮膚が虹彩・瞳孔に覆い被ります
病態の種類について
皮膚弛緩症は加齢が原因のため、ほとんどの場合、上瞼の皮膚だけでなく眼の奥の挙筋腱膜も伸びで【腱膜性の眼瞼下垂】を同時に起きています。
- 上瞼の皮膚弛緩症+腱膜性の眼瞼下垂(多い)
- 上瞼の皮膚弛緩症のみ(少ない)
手術について
以下の3つのパターンがあります
- 上瞼の皮膚切除+挙筋腱膜前転固定術
- 上瞼の皮膚切除のみ
- 眉下切開による皮膚切除
上瞼の皮膚切除と眉下切開の比較
眉下切開
眉毛の下ギリギリで切開します、しばらくは傷が見えます、半年で白い薄い白いラインになります。
上瞼の皮膚切除
弛緩した上瞼の皮膚を二重のラインにそって切除します、傷は二重のラインに隠れて目立ちません。
上瞼で皮膚切除 | 眉毛下の皮膚切除 | |
長所 |
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短所 |
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眉下切開について
ケロイド体質でなく、まぶたを上げるの力が残っていて、上瞼の皮膚が厚い方に最適です、手術後の腫れが少ないです。
後天性・眼瞼下垂について
- 腱膜性(一番多い)
- 皮膚弛緩性
- 神経性(動眼神経麻痺・ホルネル症候群など)
- 眼瞼痙攣性(顔面神経痙攣)
- 薬剤性(心療内科系の内服で)
- 原因不明
腱膜性・眼瞼下垂の原因
腱膜性は眼瞼下垂の原因で最も多く、さらに以下のように分類されます。- ハードコンタクトレンズの長期使用
- 花粉症・アトピー性皮膚炎による上眼瞼の長期間掻爬
- 加齢性
- 外傷後(交通事故など)
- 白内障の術後
腱膜性眼瞼下垂のメカニズム(*図あり)
挙筋腱膜の瞼板からの剥がれる
瞼板から挙筋腱膜が剥がれて、眼瞼挙筋が収縮しても力がうまく伝わらないため眼が開きません。
挙筋腱膜が薄く脆くなる
挙筋腱膜がゴムのように伸びて、筋肉の収縮が伝わらず、瞼があがりません。
挙筋腱膜と周囲とくっつく
筋膜が周囲にくっついて筋肉を動かすことが出来ません
ハードコンタクトレンズの長期使用
ハードコンタクトレンズを15年以上、長年使用している方は発症しやすいとされています。 コンタクトレンズを着脱する際の、まぶたを引っ張る操作で挙筋が伸びることが原因と推測されています、治療にはよく反応し、術後パッチリ眼が開きます。
長期間、眼をこすった場合
【花粉症】【アトピー性皮膚炎】等のアレルギーでまぶたを日常的にこすったり、アイメイクを落とす際に強い力でクレンジングを長期間行っている方は、挙筋が弱りやすい傾向にあります。
加齢によるもの
加齢に伴い、挙筋が弱ってしまう、挙筋と瞼板の繋がりが緩んでしまうことで、発症します。 老人のほとんどが程度の差こそあれ、老人性の眼瞼下垂が見られます。老人の場合は挙筋以外に【皮膚のタルミ・皮膚弛緩性】による眼瞼下垂が加わります。
偽性(にせもの)眼瞼下垂(*図あり)
偽性・眼瞼下垂とは
上瞼によって【瞳孔が隠れて視界不良】になのは眼瞼下垂と変わりませんが、【眼を開ける力は保たれている】状態です。原因は2つあり【一重瞼】または【上瞼皮膚弛緩症】です。
偽性眼瞼下垂の種類
【偽性眼瞼下垂】は以下の2つになります。
- 単純に一重瞼
- 皮膚弛緩症
若い人の場合
若い方の場合、以下の何れかになります
- 単純に【一重瞼】の場合:自由診療の埋没法をお勧めします。
- まれに【一重瞼】+【腱膜性の眼瞼下垂】の場合があります、その場合は眼瞼下垂の治療とと二重形成術を行います。
高齢者の場合
ご高齢の場合、以下の何れかになります
- 皮膚弛緩症のみの場合:眉下や二重のラインでの余分な皮膚切除を行います。
- 皮膚弛緩症+眼瞼下垂場合、その場合は眼瞼下垂の手術と二重のラインでの皮膚切除とを行います。
検査
問診とプジー検査により、上記の種類を鑑別できます。
当院の眼瞼下垂患者の分布
性別分布
年齢分布
地域分布
居住地域別の患者数は以下の通りです:早良区からの患者さんが最も多く、全体の約3分の1を占めています、福岡市外からの患者さんは2番目に多い約15%になります。
- 早良区: 120人 (31.0%)
- 市外: 57人 (14.7%)
- 西区: 54人 (14.0%)
- 城南区: 39人 (10.1%)
- 中央区: 31人 (8.0%)
- 南区: 26人 (6.7%)
- 県外: 26人 (6.7%)
- 博多区: 18人 (4.7%)
- 東区: 16人 (4.1%)
眼瞼下垂はトレーニングで改善できる?
トレーニングについて
眼瞼下垂に効果があるとされるトレーニングで、一般的に流布されているものには、まぶたの上をマッサージする、まぶたを上げる筋肉(拳筋)を鍛えるというもの等が見受けられますが、どれも医学的な根拠に乏しい為、過度な期待をしないことです。 眼瞼下垂はゴムのような筋膜が伸び切ってしまう、または離断して発症する為、まぶたをマッサージしたり、意図的に過剰に動かしたりしても、緩んだり・断絶した挙筋腱膜は決して戻りません、過度のマッサージは逆に症状を悪化させる可能性が高いです。
眼瞼下垂の予防方法
老化によって筋膜が緩んでくる老人性の眼瞼下垂については予防が難しいですが、まぶたに負担がかかる生活習慣を避けることで予防効果があるとは考えられます。 当院でも、下記の様な生活習慣が原因で眼瞼下垂の手術を行う方が多くいらっしゃっています。
- ハードコンタクトレンズを長期間使用している
- 花粉症・アトピー性皮膚炎等で日常的にまぶたをこする
- アイメイクを落とす際に強くクレンジングを行う
これらの行為に気を付けることで、ある程度の予防が可能です。花粉症・アトピー性皮膚炎の患者さんは日頃からしっかりと外用薬で痒みをコントロールして上瞼を強く擦らないようにしてください、またハードコンタクトレンズを使用されている患者さんはなるべくソフトコンタクトレンズへの切り替えてをお勧めします。
眼瞼下垂の検査
眼瞼下垂の診断のフローチャート
以下のフローチャートのように様々な疾患の可能性があります、問診と診察で絞り込んでいきます。
問診
問診は最も大切な診断手技です、【いつから?】【ハードコンタクトは?】【眼を擦る癖は?】など、この段階で80%原因が推測できます。
診察・計測
① 瞳孔の露出の程度
- 瞳孔がどれだけ見えているか?を見ます、瞳孔が100%見えている状態では【視界】に影響はないため、ほとんどの場合、治療の必要がありません。
- 逆に瞳孔ある程度隠れている場合は、上瞼で隠れているのか、弛緩した上瞼の皮膚で隠れているのか?一重で隠れているのか?を以下のプジーをつけって調べます
② プジー検査
【プジー】という細い金属棒を上瞼に当てて、【皮膚のたるみ】【挙筋の筋力】【ヘリング現象の有無】などを確認します
挙筋機能検査
筋肉(上眼瞼挙筋)がどれくらい動いているかを調べます。眉毛の上を押さえおでこの力を使わないようにした状態にして、最も下を見たときと最も上を見たときのまぶたのきわの移動距離を測定します、先天性眼瞼下垂で筋力自体がない場合の鑑別に有効な検査です。
③ MRD-1(margin reflex distance-1);瞼縁角膜反射距離
MRDは角膜反射(瞳孔中央)から上眼瞼縁までの距離
④ 眼瞼高
瞼裂高は角膜(黒目)の最下端から上眼瞼縁までの距離
③と④のMRD-1と眼瞼高は当院では測定していません、理由としては眼の大きさ自体に個人差が大きいため(身長のように個人差が大きいです)、数値が眼の開きに具合に必ずしも相関しないためです。
手術の要約(前転固定術)
二重のラインにそって切開します
今ある【二重のライン】か、三重がある場合は【幅の狭いライン】で切開します。
挙筋腱膜を同定します
眼瞼下垂の原因である挙筋腱膜を探します、挙筋腱膜は厚さが0.5mmしかなく、また深い部位にあるため見つけるには経験とコツが要ります。
挙筋腱膜の剥離
挙筋腱膜を見つけたら、丁寧に【眼窩脂肪】や【ミュラー筋】から剥離し、動きやすくします。
挙筋腱膜の固定
動きやすくなった挙筋腱膜を本来の位置に戻すため、これを瞼板に糸で固定します
二重形成
一重では視界不良の原因となりますので、二重を補強します、広い二重は眼の開きが悪くなりますので、基本的に奥二重になります。
切開線を閉じる前の確認
表面を縫合する前に以下の確認をいたします、必要であればその場で調節いたします。
- 出血の有無
- 左右差
- 眼の開き具合
- 眼の形
- まつ毛の向き
閉創・冷却
切開線を形成外科用の極細の糸で縫合します、帰宅前に30分横になって眼を冷やします。症例写真
術後の腫れのピークは術後2~3日です、内出血が出来る場合が有ります、ほとんど腫れは2~3週間で無くなります。
術前・術後写真1
黒目の下に白眼が見える現象を"lower scleral show"といい、重度の眼瞼下垂の時に良く見られます。
手術前・手術後写真2
手術前・手術後写真3
手術前・手術後写真4
手術前・手術後写真5
手術前・手術後写真6
手術の流れ
当日
- ハードコンタクトレンズ は手術前に外して頂きます。
- ソフトコンタクトレンズは装着した状態で手術が可能です。
- 手術時間は片眼で約30~45分になります。
- 術後、ベットで約30分間冷やして頂きます。
- 抜糸まで眼の上眼瞼のメイクは出来ません、上眼瞼以外はメイク可能です。
- 手術当日、車の運転はお控えください。
2日目以降〜
- 翌日;腫れ具合、血腫の有無を確認します。
- 3日目;腫れのピークです、腫れの為に眼が開けにくなっています。
- 7日目〜;抜糸、まだ腫れは残っています。
その他の注意事項
- 術前に採血が必要になります。
- 術後の腫れは1〜2週間目立つ事があります。
- 片眼ずつの手術も可能です。
術後に腫れやすい方
- 目が小さい方
- 眼球が突出している方
- 上眼瞼の皮膚が厚い方
- 皮膚を切除した場合
- 過去に眼瞼下垂の手術をしたことがある方
- 手術中に出血が多い方
手術代金
- 3割負担の方で約45,000円(両眼)
- 1割負担の方で約15,000円(両眼)
- 両眼は上記の2倍になります
術後の視力等についての影響について
眼瞼下垂の程度ひどい方は、ミュラー筋をつかって眼を開けようとしているため、交感神経が過剰なシグナルを出している状態です、術後は交感神経のシグナルが正常のレベルに下がるので稀に以下のことが起こり得ます。
- 視力の変化
- 眼圧の上昇(緑内障の悪化)
- 乱視の悪化(極稀)
ヘリング現象(Hering's law )について
片方の眼瞼下垂、又は左右差の眼瞼下垂がある時、症状の重い方の眼を治療すると【治療した眼】とは【逆の眼】の開きが悪くなる現象を言います。ヘリング現象が起こるかどうかは手術前のシュミレーションである程度判ります、シュミレーションでヘリング現象が出た場合は両側の眼の手術が必要になります。
Q & A
A: 多くの場合、ハードコンタクトレンズの長期装用と加齢によるものです。ただし、瞳孔異常や眼球運動障害などがある場合は、動眼神経や脳神経の筋ジストロフィー症などの大きな病気が隠れている可能性があります。
A: 眼瞼下垂は眼の開きが悪くなる病気で、慢性的な頭痛、ひどい肩こり、眼精疲労、自律神経失調の原因になることがあります。外見上は眠たそうな目つきになります。
A: 保険診療での眼瞼下垂手術の主な目的は視界不良の改善です。ただし、手術後に審美的な面も改善されることが多いです。
A: 保険診療での眼瞼下垂手術では、二重の幅の指定や目の形の指定はできません。これらは美容医療の範囲となり、自費での美容外科手術になります。
- 現在の二重のライン近くで切開します。
- 挙筋腱膜を同定して周囲からから剥離し、動きやすくします。
- 挙筋腱膜を腱板に糸で固定します。
- 左右差、眼の開き具合、眼の形、まつ毛の向きを調節します
A: 眼瞼の手術は眼科よりも皮膚の切開・縫合を日頃から行っている形成外科での手術の方が、術後の仕上がりが安定していると考えられています。
A: 手術後は30分間ベッドで眼を冷やし、その後医師の診察を受けます。眼が腫れているため、ご自身での車の運転での帰宅はできません。
A: 腫れ具合は個人差がありますが、一般的には術後の腫れのピークは2〜3日後です。内出血が生じる場合もありますが、ほとんどの腫れは2〜3週間で消失します。大切なご予定がある場合は一ヶ月は余裕を見てください。
術後の腫れや紫斑が出る可能性がありますが自然に改善します、また手術後に交感神経のシグナルが正常に戻るため以下の状態が起こることがあります。
- ほとんどの場合は一時的ですが視力が変わる場合があります。
- 眼の開きが良くなるため、ドライアイが悪化する場合があります。
- 緑内障が悪化する場合があります。
- 極稀に原因不明ですが乱視が悪化する場合があります。
A: ヘリング現象とは、片方の眼瞼下垂または左右差のある眼瞼下垂で、症状の重い方の眼を治療すると、治療した眼とは逆の眼の開きが悪くなる現象です。この現象が認められる患者さんは両方の眼の手術が必要になります。