以下の内容は院長の林が執筆しています。「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」
円形性脱毛症の原因・頻度・症状について
円形性脱毛症は比較的速やかに治るものと瘢痕化して治療の難しいものまであります、治療では近年保険適当となったエキシマライト治療が有効です
円形性脱毛症の頻度
円形性脱毛症の原因
円形性脱毛症の症状
円形性脱毛症の重症度分類
- S0: 脱毛がみられない
- S1: 脱毛巣が頭部全体の25%未満
- S2: 脱毛巣が25~49%
- S3: 脱毛巣が50~74%
- S4: 脱毛巣が75~99%
- S5: 100%(全頭)脱毛
円形性脱毛症の治りやすさ(予後について)
円形脱毛症の経過や治療後の回復の見込みのは予後は個人差があり、以下のようなパターンがあります。
- 自然治癒するケース:単発の小さな脱毛斑の場合、約80%が1年以内に自然に回復します。
- 治療に反応して改善するケース:適切な治療を行うことで、多くの患者さんで症状の改善が見られます。ただし、治療期間は数ヶ月から1年以上かかることもあります。
- 慢性化・再発を繰り返すケース: 約1/3の患者さんでは1年以上症状が続く慢性型に移行します1。この場合、治療に対する反応が鈍くなり、完全な回復が難しくなることがあります。
- 重症化するケース:慢性型の一部(約30%)は全頭型に、15%は汎発型に進行する可能性があります、これらの重症型では、回復率が10%以下と低くなります。
治りやすさ(予後)に影響する主な因子
- 円形性脱毛症の発症年齢
- 脱毛の範囲
- 罹患期間
- 家族歴:円形脱毛症の家族歴がある場合、予後が悪い傾向にあります。
- アトピー素因や自己免疫疾患の合併
- 全頭脱毛症や汎発性脱毛症がみられる場合は、局所的な円形脱毛症よりも予後が厳しいとされます。
一緒によくできる病気
円形性脱毛症は自己免疫の暴走により、他の自己免疫性疾患を合併することがよくあります。
- 甲状腺疾患(8%)
- 尋常性白斑(4%)
- SLE
- 関節リウマチ
- 糖尿病(1%)
円形性脱毛症に似た病気
頭部の脱毛を起こす病気は他にもいろいろあり鑑別診断が必要です、治りが悪いときは精密検査が必要となります。
SLE / DLE
限局性強皮症
ケルスス禿瘡
トリコチロマニア
患者自身が髪の毛を引き抜く症状で、学童の女児に多く見られます、毛根が残っているのと、髪の毛が断面で判別可能です
毛孔性扁平苔癬(LPP)
毛孔性扁平苔癬(LPP)は、原発性瘢痕性脱毛症の一種で、以下のような特徴があります:- LPPの有病率は米国成人10万人当たり13.4人と推定されています。
- 女性に多く、70〜79歳の高齢者で最も有病率が高くなっています。
- 細胞傷害性Tリンパ球により毛包皮脂腺構造が破壊され、最終的に線維性組織で置換されます。
前頭部線維化脱毛症(FFA)
主な特徴
- 脱毛パターン: 前頭部から側頭部にかけての帯状の脱毛が特徴的です。
- 皮膚の変化: 脱毛部位の皮膚は萎縮し、やや光沢を帯びた外観を呈します。
- 組織学的所見: 毛包周囲のリンパ球浸潤と線維化が認められます。
- 進行性: 緩徐に進行し、前頭部の生え際が後退していきます。
- 進行性:他の症状: 眉毛の脱毛を伴うことがあります。
禿髪性毛包炎
頭皮酒さ
Pseudocyst of scalp
梅毒性脱毛
円形性脱毛症の主な症状
- 頭部の後ろからサイド部分にかけて広範囲に脱毛が起こります。
- まだら状の脱毛
- 虫食い状(moth-eaten)の脱毛
- 全体的に薄く脱毛する場合もあります
- 眉毛や睫毛の脱毛が生じることもあります
- 痒みや痛みを伴わないことが多いです
- 円形脱毛症と似た症状を呈することがあります
円形性脱毛症の治療
リンパ球が暴走して毛根を攻撃しているため、【暴走したリンパ球】を除去する治療を行います。
外用薬
ステロイド軟膏で局所的に【暴走したリンパ球】を弱らせ、おとなしくさせます、また血流を良くする薬を併用して発毛を促進します。
内服
【セファランチン】【グリチルリチン】が使用され、重症進行例では【ステロイドの内服】を行います。
紫外線治療・エキシマライト
円形性脱毛症の治療前後の画像
円形性脱毛症のQ&A
主な症状は、頭髪や体毛が突然、円形または楕円形のパッチで脱毛することです。脱毛部位は通常、頭皮ですが、顎、眉毛、ひげ、体全体に広がることもあります。
いいえ、円形性脱毛症は感染症ではないため、他人に感染することはありません。
はい、円形性脱毛症は性別や年齢を問わず誰にでも発症する可能性があります。特に、家族に円形性脱毛症の既往がある場合、発症リスクが高まることが知られています。
主に以下の方法で診断されます:
- 視診と問診
- 毛髪の顕微鏡検査
- 皮膚生検(必要な場合)
- 血液検査(他の自己免疫疾患の可能性を確認)
治療法には以下のようなものがあります:
- ステロイド外用薬
- ステロイド局所注射
- ミノキシジル外用薬
- 免疫抑制剤
- 光線療法
- 接触免疫療法
- 漢方薬
はい、円形性脱毛症は自然に回復することもあります。一部の人は再発を経験せずに髪が完全に再生しますが、他の人は再発のリスクが高いこともあるので、経過観察が必要です。
完全な予防法はありませんが、以下のことが有効かもしれません:
- ストレス管理
- 健康的な食生活
- 十分な睡眠
- 規則正しい生活
はい、ストレスが円形性脱毛症の誘因や悪化要因になることがあります。また、脱毛症自体がストレスの原因となり、症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
はい、円形性脱毛症は年齢を問わず発症する可能性があります。子供の場合、自然回復の可能性が高いとされています。
円形性脱毛症は、他の自己免疫疾患(例:1型糖尿病、甲状腺機能亢進症など)と関連していることがあります。医師はこれらの疾患についても検査を行うことがあります。