
円形脱毛症について
このページでは、円形脱毛症について詳しく解説するとともに、当院で提供している円形脱毛症の治療法についてもご紹介します。
以下の内容は院長の林が執筆しています。「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」

円形性脱毛症の原因・頻度・症状について
円形性脱毛症は比較的速やかに治るものと瘢痕化して治療の難しいものまであります、治療では近年保険適当となったエキシマライト治療が有効です
円形性脱毛症の頻度

円形性脱毛症の原因

円形性脱毛症の症状

- 頭皮に1つまたは複数の脱毛斑が生じる。
- 脱毛斑は境界がはっきりしており、大きさは様々。
- かゆみなどの自覚症状がない場合が多い。
- 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛が抜けることもある 。
円形脱毛症のタイプ
- 単発型: 脱毛斑が1ヶ所のみ。
- 多発型: 脱毛斑が複数個。
- 全頭型: 頭部のほぼ全ての毛が抜ける。
- 汎発型: 頭髪だけでなく、全身の毛が抜ける。
- 急性びまん性脱毛症: 急激に広範囲に脱毛が起こる。
- sisaipho: 前頭部、側頭部、頭頂部に脱毛が起こり、男性型脱毛症に似た症状を呈する。

円形性脱毛症の治療

ステロイドの外用薬
脱毛部に塗布することで炎症を抑え、毛髪の成長を促します 。単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対して推奨されています。
内服
【セファランチン】【グリチルリチン】が一般に行われています、重症進行例では【ステロイドの内服】を行います。
紫外線治療・エキシマライト

紫外線・エキシマライトは皮膚のリンパ球を弱らせます。2020年4月より保険診療が可能となり、ステロイド軟膏と【紫外線・エキシマライト】の組み合わせで、多くの円形性脱毛症は治療可能です。3割負担で1回1000円、1週間に1〜2回の治療が理想です。
局所免疫療法
脱毛部に薬剤を塗布して、アレルギー反応を起こすことで毛髪の成長を促します。局所免疫療法は、脱毛部にアレルギー性接触皮膚炎を起こす物質を塗布することで、免疫系の反応を変化させ、毛髪の成長を促す治療法です 。SADBE(squaric acid dibutylester)やDPCP(diphenylcyclopropenone)といった薬剤が用いられます 。
SADBE
SADBE(スクエア酸ジブチルエステル)は、局所免疫療法に用いられる感作物質です 。SADBEを頭皮に塗布することで、軽度の皮膚炎を起こし、毛髪の成長を促します 。
注射
脱毛部にステロイド薬などを注射する治療法、一般的にはケナコルトという薬剤を使用しますが、皮膚科陥没することがあるので注意が必要です。
JAK阻害薬(コレクチム軟膏)
近年注目されている新しい治療薬で、免疫の過剰な反応を抑えることで脱毛を抑制し、発毛を促します。JAK阻害薬は、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の働きを阻害する薬剤です 。JAKは、免疫細胞の活性化に関わるシグナル伝達経路において重要な役割を担っており、JAK阻害薬は、このシグナル伝達を阻害することで、免疫系の過剰な反応を抑え、炎症や自己免疫疾患を抑制します 。円形脱毛症の治療においては、JAK阻害薬は、毛包への免疫細胞の攻撃を抑え、毛髪の成長を促す効果が期待されています 。

円形性脱毛症の治療前後の画像

円形性脱毛症に似た病気
頭部の脱毛症の原因
頭部の脱毛を起こす病気は他にもいろいろあり鑑別診断が必要です、治りが悪いときは精密検査が必要となります。
SLE / DLE
代表的な膠原病で、原因不明の炎症性の病気です、脱毛部に発赤・炎症があります、赤く炎症があるので円形性脱毛症は見え方が異なります。SLE/DEL脱毛症の詳細はこちら⇒
限局性強皮症
上記の慢性皮膚エリテマトーデス(DLE)の一型で、以下の特徴があります 境界明瞭な紅斑 鱗屑、毛孔性角栓 瘢痕性脱毛 そう痒、紅斑、および落屑を伴います。限局性強皮症の詳細はこちら⇒
ケルスス禿瘡
カビが原因の脱毛で、円形性脱毛症のようにツルッとしていません。ケルスス禿瘡の詳細はこちら⇒
トリコチロマニア・抜毛症
患者自身が髪の毛を引き抜く症状で、学童の女児に多く見られます、毛根が残っているのと、髪の毛が断面で判別可能です。トリコチロマニア・抜毛症の詳細はこちらから⇒
毛孔性扁平苔癬(LPP)
毛孔性扁平苔癬(LPP)は、原発性瘢痕性脱毛症の一種で、比較的稀な疾患です。頭皮のかゆみ、痛み、灼熱感が最も一般的な初期症状です。 毛包周囲の赤みや鱗屑(りんせつ)や 毛穴の周りが赤くなり、フケのような白いかさぶたができることがあります。 LPPの詳細に関してはこちらから⇒
前頭部線維化脱毛症(FFA)
前頭部から側頭部にかけての帯状の脱毛が特徴的で、上記のLPPの亜型と思われています、FFAは比較的新しく認識された疾患で、瘢痕性脱毛症の一種です。主に閉経後の女性に多く見られますが、閉経前の女性や男性にも発症することがあります。FAAの詳細に関してはこちらから⇒
禿髪性毛包炎
赤くて炎症があります、まれな型の瘢痕性脱毛症で、慢性的な深部毛包炎により広い範囲で頭髪が抜けます。毛髪が束になって残ることがあり、正確な病因は不明です。遺伝的素因や自己免疫疾患との関連も示唆されています。禿髪性毛包炎の詳細に関してはこちらから⇒
頭皮酒さ
Pseudocyst of scalp
梅毒性脱毛
梅毒性脱毛症は、梅毒の第2期に現れる特徴的な症状の一つです、まだら状・虫食い状の脱毛が特徴的です
頭部脱毛の診断フローチャート

円形性脱毛症の重症度分類
- S0: 脱毛がみられない
- S1: 脱毛巣が頭部全体の25%未満
- S2: 脱毛巣が25~49%
- S3: 脱毛巣が50~74%
- S4: 脱毛巣が75~99%
- S5: 100%(全頭)脱毛

円形性脱毛症の治りやすさ
(予後について)
- 自然治癒するケース:単発の小さな脱毛斑の場合、約80%が1年以内に自然に回復します。
- 治療に反応して改善するケース:適切な治療を行うことで、多くの患者さんで症状の改善が見られます。ただし、治療期間は数ヶ月から1年以上かかることもあります。
- 慢性化・再発を繰り返すケース: 約1/3の患者さんでは1年以上症状が続く慢性型に移行します。この場合、治療に対する反応が鈍くなり、完全な回復が難しくなることがあります。
- 重症化するケース:慢性型の一部(約30%)は全頭型に、15%は汎発型に進行する可能性があります、これらの重症型では、回復率が10%以下と低くなります。

治りやすさ(予後)
に影響する主な因子
- 円形性脱毛症の発症年齢
- 脱毛の範囲
- 罹患期間
- 家族歴:円形脱毛症の家族歴がある場合、予後が悪い傾向にあります。
- アトピー素因や自己免疫疾患の合併
- 全頭脱毛症や汎発性脱毛症がみられる場合は、局所的な円形脱毛症よりも予後が厳しいとされます。

円形性脱毛症と一緒によくできる病気
円形性脱毛症は自己免疫の暴走により、他の自己免疫性疾患を合併することがよくあります。
- 甲状腺疾患(8%)
- 尋常性白斑(4%)
- SLE
- 関節リウマチ
- 糖尿病(1%)

円形性脱毛症のQ&A
主な症状は、頭髪や体毛が突然、円形または楕円形のパッチで脱毛することです。脱毛部位は通常、頭皮ですが、顎、眉毛、ひげ、体全体に広がることもあります。
いいえ、円形性脱毛症は感染症ではないため、他人に感染することはありません。
はい、円形性脱毛症は性別や年齢を問わず誰にでも発症する可能性があります。特に、家族に円形性脱毛症の既往がある場合、発症リスクが高まることが知られています。
主に以下の方法で診断されます:
- 視診と問診
- 毛髪の顕微鏡検査
- 皮膚生検(必要な場合)
- 血液検査(他の自己免疫疾患の可能性を確認)
治療法には以下のようなものがあります:
- ステロイド外用薬
- ステロイド局所注射
- ミノキシジル外用薬
- 免疫抑制剤
- 光線療法
- 接触免疫療法
- 漢方薬
はい、円形性脱毛症は自然に回復することもあります。一部の人は再発を経験せずに髪が完全に再生しますが、他の人は再発のリスクが高いこともあるので、経過観察が必要です。
完全な予防法はありませんが、以下のことが有効かもしれません:
- ストレス管理
- 健康的な食生活
- 十分な睡眠
- 規則正しい生活
はい、ストレスが円形性脱毛症の誘因や悪化要因になることがあります。また、脱毛症自体がストレスの原因となり、症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
はい、円形性脱毛症は年齢を問わず発症する可能性があります。子供の場合、自然回復の可能性が高いとされています。
円形性脱毛症は、他の自己免疫疾患(例:1型糖尿病、甲状腺機能亢進症など)と関連していることがあります。医師はこれらの疾患についても検査を行うことがあります。