【医師監修】粉瘤・脂肪種の治療(くり抜き法)
このページは星の原クリニック 院長 林俊(医学博士)林俊が記載したものです。
ご来院前にお読みください
当院は入院設備がございません、またCTなど大きな検査機材もございません、マンパワーも限りがあります、総合的に判断して当院での手術治療をお引き受け出来ない場合がございます。以下の様なケースは当院での手術治療はお引き受けしておりません、総合病院等の紹介や他の医療機関での治療をお勧め致しております、ご理解の程、ご協力の程よろしくお願いいたします。
- 当院では安全に施術出来ないと判断した場合
- 【手術の傷跡・経過】が患者さんのご希望通りにならないと判断した場合
- 手術後の【通院が不可能】な方
- 【陰部・肛門周囲】は手術台が対応していないため、対応できません
- 重度の心疾患・脳疾患・精神疾患などの【重度の基礎疾患】がある場合
- 手術中に安静が保てない場合
粉瘤の原因と症状
粉瘤とは
多老廃物が貯まる病気です、多くの場合、中心に黒色の開口部があり、悪臭を伴う粥状の物質を排出します。治療で大切なのは被膜も取り除く事です、被膜が残ると再発します、右の様ないろいろな呼び方があります。
- 粉瘤
- アテローム
- 表皮嚢腫
- 類表皮嚢胞
粉瘤の原因
毛包の組織の一部の異常と言われていますが ...
毛包の組織が皮膚の下に陥入
粉瘤は表皮や毛包の組織が皮膚の下に陥入して、【袋状に垢・汗等の老廃物】が貯まる病気です。老廃物が貯まるという病気で、一般的に不潔にしていることが原因と思われていますが全く関係ありません。遺伝性
外毛根鞘性嚢腫の様に遺伝性も関係することがあり、清潔にしていても出来ます。また外傷やピアス等が原因の粉瘤もあります。本当のところはまだ?
ただ、ほとんどの粉瘤は原因がはっきりわかっていません。予防することが難しい為、様子を見ていても完治しません、できた段階で早めに切除すると傷が小さくできます。粉瘤の原因のまとめ
- 原因不明・体質(←圧倒的にコレが多い)
- 遺伝性(外毛根鞘嚢腫)
- 外傷性・ピアス痕
粉瘤の種類
一般的に粉瘤と似た病気は以下のようなものがあります。
表皮嚢腫・類表皮嚢腫
外毛根鞘嚢腫
炎症性粉瘤
多発性毛包嚢腫
慢性肉芽腫の状態
粉瘤と似た病気
皮膚・皮下のしこりでも粉瘤と違う病気が結構多くあります、それらについて解説いたします。
脂肪腫
粉瘤に次に日常的に良く見かける皮下腫瘍です、穴がない粉瘤とは区別がつかない場合が多くのですが、エコー検査をすれば一目瞭然です。【脂肪層】【筋層内】【骨膜下】など様々な深さで発生します、自然に消失する事はほぼありません、大きくなると傷跡が大きくなるので早めの外科的な治療をお勧めします。石灰化上皮腫(毛母腫)
石灰化上皮腫(毛母腫)も日常的によく遭遇する皮下腫瘍です、小児に良く起こる所が粉瘤と異なります、また触った感じが石の様に硬いのも粉瘤との違いです、粉瘤の様に被膜がなく、筋層内や皮下脂肪に入り込んでいることが珍しくなく、小さい傷では再発しやすく、粉瘤に比べて手術の跡が長くなります。血管脂肪腫
全身に多発する皮下腫瘍です、ほとんどの場合皮膚に色調の変化はありません、薄い被膜に包まれた嚢胞で、内容物はコーンポタージュの様な液体です、多発するのが特徴で、数が少ない場合はエコーでは粉瘤と区別がつきません、治療は外科的摘出になります。化膿性汗腺炎
繰り返し炎症と膿瘍を起こす疾患です、臀部(おしり)・腋窩(わき)、鼠径部、乳房下などアポクリン汗腺の多い部位に発症します、炎症性の粉瘤とは初期の段階では見分けがつきません、化膿性汗腺炎は注意深く手術しても再発するのが特徴です、重症度が高い場合は、アダリムマブ(ヒュミラ®)の皮下注射を行います。有棘細胞癌が〜4.6%発症すると報告されていますので注意が必要です。毛巣洞(毛巣瘻)
肛門と尾底骨の間に発症する膿瘍で、炎症性粉瘤と大変似ており区別が難しいです、粉瘤のように皮下の袋状のシコリができて、その中に毛髪入り込む病気です。多くの場合、嚢胞は肛門近く正中に発症してほとんど頭側に病巣が広がって行きます。粉瘤だけでなく肛門の病気の痔瘻とも鑑別がつきにくいため、総合病院での精密検査が必要で、専用の手術台もいるため星の原クリニックでは治療を行いません、原因は分かっていません。耳瘻孔
耳たぶ付近にできる嚢胞性の疾患で、病態は粉瘤に近く、皮下に皮膚の一部が潜り込んだ状態で、底に垢や皮脂が溜まります、出生時より小さな穴があるのが特徴で、問診で診断がつく時があります。皮膚線維腺腫
粉瘤と同様に【しこり】となる病気ですが、粉瘤が皮下の病気に対して、【皮膚線維腺腫】は皮膚にできる病気で皮膚ごと切除する必要があり、粉瘤のように【くり抜き法】による手術が出来ません、気にならなければ様子見で大丈夫です、それほど大きくなりません。外傷性・術後瘢痕
粉瘤の手術後にできる【しこり】です、体質や病変部の場所に影響されます。粉瘤の再発と区別が難しい場合があり、エコー検査でも粉瘤と診断してしますことがあります。多発性脂腺嚢腫
思春期以降に、全身(特に腋窩,前胸部,上肢などに好発)に多発する皮下腫瘍です、内容物は皮脂で満たされています。大きさは3~30mm程度で、個々の摘出は難しくありませんが、嚢腫が極めて多く根治が大変です、内服や外用薬では良い治療法はありません。あまり見かけません。
粉瘤は癌になる?
確率は高くありませんが稀に粉瘤の被膜から癌が発生することがあります、当院では若い人を除き、摘出した粉瘤は悪性の有無を病理検査で詳しく調べることがあります。
粉瘤が悪性化(ガン化)する可能性について
- 平均年齢61.8歳(28〜96歳)
- 男性に多い(69%)
- 頭か首にできることが多い(54.8%)
- 平均の大きさ:5.0cm(0.7~20cm)
- 平均発症期間:92.6カ月(0.5~480カ月)
癌である場合の主な症状
- 疼痛(24.2%)
- 急速な嚢胞の拡大(48.6%)
- 紅斑、潰瘍、排膿などの皮膚の変化(38.2%)
- 抗生物質治療に失敗(25%)
ただ、これらの特徴は炎症性粉瘤ではよくみられる症状の為、過度に心配する必要はありませんが以下のケースは病理検査を実施します。
病理検査が必要なケース
- 悪性変性の疑いが高い場合
- しこりが痛い場合
- 急速な成長、皮膚の変化を呈している場合
- 感染したと思われる嚢胞が内科的治療に反応しない場合
術前検査
超音波検査
安全・正確な手術を実施するために、手術前に超音波検査を実施いたします。
下の写真は一見典型的な粉瘤ですが、エコー検査を実施した所、【雪だるま様】の粉瘤でした、エコー検査で前もって深い部位にも粉瘤があることがわかっていたので、1回の手術で取りきりました。
術前採血
腫瘍が大きい、重度の基礎疾患がなど以下の方は術前に採血が必要となります
- 腫瘍の大きさが5cm以上の方
- 糖尿病がある方
- 中程度以上の肝臓の病気がある方
治療方法について
一般的な『切開法』と『くり抜き法』・『小切開法』の違いについてご案内です。
一般的な切開法
くり抜き法
小切開法
なるべく、きれいに小さい傷で治療を目指していますが、以下のケースでは小さなキズ・小切開・くり抜き法での施術は行えません。
- 赤く腫れている病変
- 患部の場所が深い
- 小さい切開から出せない硬い病巣
- 腫瘍と周囲の癒着が強い場合
- 血が止まりにくい方
- 心臓・肝臓・脳に重度の病気がある方
症例の写真
背中の脂肪腫(70mm)
背中の脂肪腫(70mm)
大きさが7cmの脂肪種です、古典的な切開線は灰色の線で切開線は腫瘍と同等または大きくなります、脂肪種の場合は大きさによって4〜8mmの円形〜楕円形の切開線になります、今回は脂肪種が大きかったので中央の円形の大きさ8mmの孔を開けました。
脂肪種の症例(術中写真)
脂肪種の症例(縫合線)
右小鼻の粉瘤の症例
右小鼻の粉瘤の症例
手術中の写真
傷跡(術後1週間)
女子小学生の大腿外側の粉瘤
女子小学生の大腿外側の粉瘤
背中の15mm大の粉瘤
背中の15mm大の粉瘤
摘出後
摘出した被膜
背中の40mm大の粉瘤
背中の40mm大の粉瘤
【術前】
背中の4cmの粉瘤です、4mmのトレパンで皮膚切開しました。【被膜の剥離】
被膜を周囲から剥離して、引きずり出しています。【被膜を摘出】内容物は前もって絞り出しているので、被膜の袋だけになっています。
【縫合】細かく縫合します、抜糸は2週間後になります。
中の20mm大の粉瘤
背中の20mm大の粉瘤
背中の2cm大の粉瘤です。4mmのトレパンを使用しました。鼻の下の20mm大の粉瘤
鼻の下の20mm大の粉瘤
鼻の下の2cmの粉瘤です、傷が目立つ部位ですので頑張って小さな傷(2mm)で摘出しました。
手術までの流れ
①ご予約
②診察
③検査
④ご予約(後日施術)
⑤手術
⑥術後の再診
⑦抜糸
当院皮下腫瘍(粉瘤・脂肪腫など)患者の統計
2024年11月までの治療患者数は約3500例で、以下のデーターは令和1年10月〜令和6年10月の5年間の集計データーです。
性別差
性別では若干男性が多い傾向です
- 男性:1,038名(52.99%)
- 女性:921名(47.01%)
- 合計:1,959名
年齢別の患者数
加齢ともに徐々に増加し、40歳代ピークになり、その後年齢とともに減少して行きます。
- 40代:510名(26.03%)
- 30代:379名(19.35%)
- 50代:385名(19.65%)
- 20代:259名(13.22%)
- 60代:194名(9.90%)
- 70代:107名(5.46%)
- 10代:102名(5.21%)
- 80代:23名(1.17%)
居住地域別統計
クリニックの所在地の早良区からの患者さんが一番多く、4番目の10%はやや遠方の福岡市外から。1.3%は遠方の県外からの患者さんでした。
- 早良区:770名(39.31%)
- 西区:287名(14.65%)
- 城南区:275名(14.04%)
- 市外:196名(10.01%)
- 中央区:143名(7.30%)
- 南区:127名(6.48%)
- 博多区:84名(4.29%)
- 東区:51名(2.60%)
- 県外:26名(1.33%)
皮下腫瘍診察のWEBご予約
【診察のWEB予約】が可能です、【メニュー】から《30分》粉瘤等の皮下腫瘍の【診察】をお選びください。なお手術の予約は診察後になります、ご了承ください。(当日に手術室に空きがある場合、当日に手術可能になる場合がございます)
粉瘤など皮下腫瘍のQ & A
全てのケースでくり抜き法が適用できるわけではありません。皮膚の厚い部位や大きな腫瘍の場合は小切開法など他の方法が適している場合があります。事前の診察で適切な治療法を判断します。
当日に枠があればその場で手術が可能ですが、空きが無い場合は後日手術のご予約をお取りいただいております。
手術時間は大きさや炎症の有無によって異なります、小さい粉瘤は15~30分程度、大きい粉瘤や炎症のあるものでは30〜60分です。
事前に局所麻酔を行いますが、痛みの感じ方には個人差があります、ほとんどの場合手術中は痛みを感じません。
以下のようなケースはくり抜き手術が出来ません
- 患部が細菌感染によって腫れている
- 患部の場所が深い
- 小さい切開から出せない硬い病巣
- 腫瘍と周囲の癒着が強い場合
- 血が止まりにくい方
手術後7〜14日程度で抜糸が必要です。また術後の血腫や感染症の確認のため、1〜2回の受診が必要となることがあります。
安全な手術のため、超音波検査を実施します。また腫瘍が5cm以上の場合や糖尿病などの基礎疾患がある方は術前に採血検査が必要となります。
陰部・肛門周囲の病変や、重度の基礎疾患がある場合など、当院での治療をお断りすることがあります。その場合は他の医療機関をご紹介します。
動画解説
くり抜き法について
粉瘤のくり抜き法
脂肪腫の小切開法
当院での実際の小切開方による脂肪腫の施術動画をご覧ください。(腫瘍の性状によっては小切開方では実施できない場合があります)
施術料金(3割負担時)
- 部位と大きさによって施術料金が異なります
- 粉瘤の被膜に皮膚癌が稀に発生します、経過の長い粉瘤は【病理検査】を実施いたします
- 病理検査;3割負担で3,000円
露出部(3割負担時) | |
〜2cm | ¥4,980 |
2〜4cm | ¥11,010 |
4cm〜 | ¥13,080 |
非露出部(3割負担時) | |
〜3cm | ¥3,840 |
3〜6cm | ¥9,690 |
6〜12cm | ¥12,480 |
12cm〜 | ¥24,960 |