【酒渣】とは中高年の【顔】に発生する原因不明の治りにくい【赤ら顔】です、原因が不明なのと似た病気が多いため簡単に治らない場合が多くあります、このページでは【酒渣】について少し詳しく記載いたします。
【酒渣】で診察をご希望の方は、【赤み】など症状がある時の受診をお願いします、症状が出ていなければ詳細が判りかなます。メイクを落とせない方は【初診】【再診】とも診察が不可能でございます(症状が判らないため)、メイク落とせる別日かメイクを落としてご来院ください。
以下の内容は院長の林が執筆しています「文責:星の原クリニック院長 医学博士 林 俊」
はじめに
超要約すると【原因不明の赤ら顔です】、日本では【酒さ】は2022年5月まで健康保険制度で使用できる有効な治療薬がなかったため、保険診療では治療できませんした、2022年5月下旬より海外での標準的な酒渣治療薬のロゼックスゲル(0.75%メトロニダゾール)が健康保険で使用できるようになりました。
- 【酒さ】の原因はよく判っていません
- 原因が特定できない【赤ら顔】を酒渣と診断することがあります
- 顔にできます、体や首には出来ません
- ステロイドの外用薬を継続して一ヶ月以上顔に使用すると起こりやすくなります
- 気温の変化や日光でが症状が悪化する事が多いです
- 治療を中止すると良く再発します
- 【酒さ】と診断された方の1割り程度はニキビダニが原因の毛包虫症です。
- 歯に金属の詰め物がある場合は【金属アレルギー】が関係する事があります。
酒渣のタイプ
3種類のタイプがあります、『紅斑・毛細血管拡張型』・『丘疹・膿疱型』・『腫瘤・鼻瘤型』です。
- 紅斑・毛細血管拡張型
- 丘疹・膿疱型
- 腫瘤・鼻瘤型
紅斑・毛細血管拡張型
血管拡張に伴う火照り、敏感肌が強く、女性、更年期に伴うhot flushの合併が多く、治療が難しいです。
丘疹・膿疱型
炎症反応が強く、【ニキビ】と見た目が似ています、丘疹・膿疱型は他のタイプに較べて治療に良く反応します。
腫瘤・鼻瘤型
白人の男性に良く見られます、日本ではほとんど見かけません。
酒渣と似ている病気
【酒さ】と似ている病気がいろいろあります、症状が似ていて診断が困難な場合があります。
- ステロイド【酒さ】
- 毛包虫(ニキビダニ)性痤瘡
- 接触性皮膚炎
- 花粉症性皮膚炎
- 金属アレルギー
- 光線過敏症
- 脂漏性皮膚炎
- SLE
- シェーグレン症候群
- Sweet病
- 皮膚筋炎
- ニキビ
- 好酸球性毛包炎
- 播種状粟粒性狼瘡(酒渣の亜型)
- 皮膚サルコイドーシス
- 降圧剤(カルシュウム拮抗剤)
- 更年期障害
ステロイド【酒さ】
強さに関係なく、1ヶ月以上連続して顔にステロイド外用薬を使い続けると起こると言われています、ステロイドを中止する必要がありますが、リバウンドが必発で症状が一過性にひどくなります。
毛包虫症
【酒さ】と似た病気のニキビダニによる【毛包虫症】があります、顕微鏡検査ですぐ診断がつきます。【毛包虫症】は治療によく反応して2週間程度で赤みが改善することが多いです。
下の顕微鏡写真は赤ら顔の患者さんから採取した皮脂です、8匹のニキビダニが確認されました。
花粉症性皮膚炎
あまり知られていませんが、花粉症によるアレルギーは眼や鼻だけでなく【皮膚】にも起こります、痒みと伴う赤みが顔面〜頸部に発生します、福岡の場合は黄砂も影響します。
金属アレルギー
原因不明の【難治性の顔面の赤み】は、口腔内に金属の詰め物が原因の場合があります、パッチテストをおこなって、金・ニッケル・コバルトのアレルギーの有無を調べます。強い反応が出た場合はセラミックの歯に交換する必要があるかもしれません。
好酸球性毛包炎
痒みのある、毛穴に一致した、顔面も【輪状の赤み】がある場合は【好酸球性毛包炎】を疑います、治療にはインドメタシンという少し変わった内服薬を使います。
播種状粟粒性狼瘡
眼の周囲にできる多発性のニキビに似た丘疹・膿疹で酒渣の1タイプと言われてもいます。
降圧剤(Ca拮抗剤)
降圧剤の【Ca拮抗剤】には血管拡張作用があります、【赤ら顔】降圧剤にカルシュウム拮抗剤を内服してい方は他の種類の降圧剤に変更することで【赤ら顔】が改善することがあります。
検査
治療に先立ち、または同時進行で原因を調べます。
- ニキビダニの有無を調べます。
- 採血:アレルギー体質の有無・程度を確認します。
- パッチテスト:接触性皮膚炎の有無・原因を調べます。
酒渣が合併しやすい全身性の病気
- 高脂血症
- 高血圧・狭心症
- 炎症性腸疾患
- パーキンソン病
- リウマチなど自己免疫性疾患
治療
欧米での【酒さ】の一般的な治療はメトロニダゾール軟膏とテトラサイクリン系抗生剤の内服が基本になります。レーザー治療は良く効きますが施術料金が他の治療法に比べて高くなります。当院ではアゼライン酸外用、イベルメクチン外用をご用意していますがいずれも自由診療になります。
- ステロイド軟膏の中止(リバウンドが起きます)
- テトラサイクリン系抗生剤の内服
- メトロニダゾールの外用
- アゼライン酸の外用
- イベルメクチンの外用
- 抗生剤の内服
- プロトピック軟膏
- レーザー治療(LBOレーザー・ヤグレーザー)
- 漢方薬
外用薬
外用薬は3種類を用意しています、アレルギーや効果を見ながら使い分けます
メトロニダゾール
1988年にFDAで酒渣の外用治療薬として認可されてから酒渣外用治療のスタンダードとなりました、【抗菌】【抗原虫作用】【抗炎症作用】あります、国内では2022年5月末より【ロゼックスゲル】として認可されました。
アゼライン酸
小麦やライ麦などの穀類や酵母に含まれている天然物由来の酸で、海外ではニキビ治療にも使用されており、妊婦さんにも使用できます、【メトロニダゾール】と同等の効果があると言われています。
【参考文献】pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25607706/ 【価格】15g:1,980円 【副作用】:10%で熱感・湿疹・紅斑・乾燥・そう痒・色素沈着など一般的な接触性皮膚炎の反応
イベルメクチン
寄生虫に作用する駆虫剤です、赤ら顔の原因となる毛包虫に効果があります、【メトロニダゾール】より効果が優れていたとのデーターもあります。 【参考文献】:www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6109029/ 【価格】10g:1,650円 【副作用】:低頻度で熱感・湿疹・紅斑・乾燥・そう痒など一般的な接触性皮膚炎の反応
治療期間・再発など
【酒さ】は原因がよく判っていません、内服・外用を中止すると再発することが珍しくありません。治療薬の【ロゼックス】の処方は通常12週間までとなります。
- 最低1〜2ヶ月必要です
- 治療中止1ヶ月で24%が再発します。
- 治療中止6ヶ月で60%が再発します。